へっぽこ同人作家、出張編集部に特攻する
とあるへっぽこ同人作家が同人誌(二次創作)を持って
出張編集部に行った結果です。
コミティアに参加した疲れから、出張編集部に衝突してしまう、、、
へっぽこ同人作家、出張編集部に特攻する
目次
1.コミティアってなんだ?
同人イベントは「オールジャンル」のように特にジャンルに制限のないもの、
「〇〇オンリー」といった二次創作元の作品や「スク水オンリー」など属性でカテゴリーを絞ったものなど、
それぞれ特色があります。絞られた作品や属性に所縁のある展示や企画などが併設されるイベントも多いです。
その中でもコミティアは、「一次創作のみ(二次創作は禁止)」という制限があるのが特色です。
また出張編集部と言って、各出版社の編集部が出展しており、持ち込み希望者は原稿をチェックして貰える事も
大きな特徴と言えます。
2.同人誌を持って特攻してみた
とある凄い方(神)に、「本見てあげるから会場に持ってきてね」と言われ、
自分の同人誌(COMIC1☆13発行、こんいろうさぎのそだてかた)を持参しました。
前より雑...など、釈然としないコメントを頂き、難しい顔をしていたそのとき、
神「これ持って出張編集部に行ってらっしゃい」
自分「え゛!?!?これ二次創作ですが。。。」
神「オリジナル描いたらとか言ってるといつまで経っても行かれないから、はやく行っておいで(にっこり)」
自分「んごおおおお!?!?(本気と書いてマジですか)」
神「さあ!」
自分「((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル」
本気で拒否すれば断ることも出来たのでしょうが、それはしませんでした。
今まで創作の世界に憧れを抱きつつ、自分には無理だと勝手に心に言い聞かせてしまい、
いつまでも最初の一歩(最初の作品を公表してみる、イベントに出展してみる)
を踏み出せず時間ばかりが過ぎていきました。
平たく言えば、同じ過ちを繰り返したくなかったのでしょう。
逃げるのは簡単だが、逃げてたところで良い結果は何一つ生まれない。
かと言って自分で飛び込む勇気は持ち合わせていなかった。
出張編集部に見せる事に関しては、表面上は難色を示しつつも、
本心は満更でもなかったのかもしれない。
時間は午後1時を回った頃合い。
会場内は大手サークルは完売し撤収する所も散見され、徐々に人波も引いてきていた。
依然として順番待ちの列をなす編集部もみられたが、
全体として引き潮なのは同様であり、
退屈そうに自社の雑誌を読み耽ったり、スマホをもてあそぶ編集部の人もいた。
どこの編集部に声をかけるかでまず悩んだ。
相当に悩んだ。
なにせ持ってきている本は二次創作(ご注文はうさぎですか?ファンブック)であるうえに、
版元の編集部(芳〇社)は出展していない!
どこに持っていくにせよ、他社版権の二次創作なのだ。
「え、何?ライバル誌の二次創作で何しに来たの?ウチへの当てつけ?」
みたいな対応も覚悟した。
生まれたての子牛のようにプルプルと狼狽しながら、編集部の人の顔を伺って回った。
そんな中、自社の雑誌を読みふける同い年ぐらいのニーチャン(失礼)と目が合った。
自分「す、、、すいません!!!」
ニーチャン「はい」
自分「二次創作でも見てもらえますか」
ニーチャン「はい、大丈夫ですよ」
そのニーチャンは変わらず退屈そうな表情のまま、間の抜けたような声を返してきた。
ニーチャン「受付票は?」
自分「あ、まだです。じゃあ受付票かいてきます!」
ニーチャン「おう。」
そう言ってその場を離れた。
イベントスタッフが運営している、出張編集部の案内所みたいな所に向かった。
そこには各編集部ごとに受付票(順番待ちの整理券も兼ねる)が置かれていた。
さっきのニーチャンの居た編集部の紙を取ると、そこに手早く自分の情報を記入した。
なになに、、、本名は...「稲上 ちひろ(仮名)」
年齢...うーん。この年でこの内容???って思われるんじゃないかという、
変なプライドが邪魔をしたが、
じゅうななさ(ry...じゃなくて嘘偽りなく<censord>歳と書いた。
ペンネームは...「いなかみ」と。
サークル名...「ちぇりーりうむ」。
URL...書いても良いけどこんな場末の廃業寸前の酒場みたいなの、
書いても仕方ないし、まあいいか(未記入)。
活動歴...なになに、、、カッコで「掲載、アシスタント歴」って書いてある。
これ、同人はカウントされないよね、一般的には。
履歴書で言うところの「職歴:なし」とか「職歴:家事手伝い」みたいなもんだ。
ない!!!貧しいどころか無いぞ!!!無乳だ!!!
申し訳程度に「なし(同人のみ)」...と。
それ以外にも住所とかメールアドレスとか
<strike>何の面白味もないので省略されました</strike>
自分のお腹の虫の気が変わって、何もかも見なかった事にして敵前逃亡する前に、
さっきのニーチャンのところに急いだ。
自分「お、、お願いします!」
ニーチャン「どれ...」
自分「...」
ニーチャン「.....」
自慢ではないが、自分はこういう内面を表出したモノを
目の前でジロジロ見られるのが苦手である。
超苦手である。
小学校の作文なんかも、風邪とか怪我で免除されるなら、
自爆してでもそっちを取るタイプだった。
なのでめちゃくちゃ動悸はするわ冷汗、吐き気もあるわで、
症状だけで見たら今すぐ病院Go!の奴だった。
Goした所で、病気でもないのにのたうち回ってるただの変な人扱いされ、
そんな奴に付き合ってる暇なないと一蹴されるのがオチだろうが。
ニーチャンがページをぺらぺらとめくっている間、
自分とニーチャンだけアナザー・ワールドに迷い込んで
時間が止まってしまったかと思った。
魔法少女モノだったら、防御結界に閉じ込められてなぶり倒され、
「どこも逃げ場は無いよ、残念~!!」って死刑宣告を食らってるあたりだろう。
永遠とも思えるような時間が続いた。
ニーチャンは一読した後最初のページに戻り、またペラペラとページをめくった。
道半ばで手を止めると、やれ描きわけが出来ていない、左右のページのバランスが悪い、顔マンガになっているだの流れるように口から衝撃波を繰り出した。
ニーチャンの言葉は、緊張しすぎて頭に入っては蒸発していくばかりだった。
それでも必死で持参したサークルチェックリストの端に言われた通りの内容を書き留めた。
武器を奪われ一方的に殴られ続けるヒロインとシンクロ率80%ぐらい行ってただろう。
ニーチャン「何か質問はありますか?」
一通り必殺技のコンボを繰り出し終え、、もとい喋り終わったニーチャンはそういった。
余りにいたたまれなすぎて、一刻も早くその場を離れたかった。
自分「いえ、特にないです。ありがとうございました」
そう言って立ち上がり、足早にそこを後にした。
コミティアの一般参加の人の喧騒の中に紛れると、急に世界が色付き始めた。
やっと悪役にいたぶられる悲劇のヒロインから、
平凡な生活を送るだけのモブキャラに戻れたんだと実感した。
平凡って素晴らしい。
神「どうだった~?(にやけ顔)」
自分「ボロクソに言われました。でももっともすぎて何も言えない。メンタル削られて辛い。」
神「でも行ってよかったでしょ~?」
自分「そうですね、、、」
神「まあ行くなら早い方が良いしね~」
自分「早いもなにも、こんな年でこの内容ですけどね~」
神「いやいや~~そんな事ないよ~~~」
神は終始不敵な笑みを浮かべていた。
その顔の裏で面白がっているのか喜んでいるのかは分からなかったが、
どこか満足した様子だった。
それ以外にも、凄い本を買ったとか、
神のブースの設営道具が機能的すぎて怖かったりとか、
BLイベントから湧いてきたリア友にエンカしたとか、
色々と小イベントもあった気がするが、そんな事はもはやどうでも良かった。
それぐらい、あのニーチャンとの闘いは過酷で冷徹な物だった。(当社比)
いつか言われた事をちゃんとこなしつつオリジナルを描けるようになって、
またあのニーチャンとの再戦を(一方的に)誓い、戦場の有明を後にしたのだった。
3.出張編集部に行ってみて
結論から言うと、行って良かったです。
理由は以下のとおり。
3.1言っている事は建設的な内容ばかり
言われた事自体は、自分でも本やマンガの描き方系のサイトで見覚えのある内容ばかりでした。
学校の勉強で言えば、「教科書的内容」ってやつです。
基本をちゃんとやってください、ってことでしょう。
ゲームで言う所の裏コマンドや裏技のような、現実では実行不可能な奴ではありません。
ゆえに、それすら満足に出来ない自分の事を考えると、悔しいやら不甲斐ないやら、そんな色々な感情が湧いてきました。
それが、出張編集部で感じた「辛い」なんだろうと思いました。
3.2非建設的な事は言われない
具体的には、
「この年でこの内容?」
「辞めた方が良いんじゃない?」
「本当に原作読んでる?」
など、
単に描き手をバカにするような内容や、言われても対処のしようがないことです。
誹謗中傷だけなら誰だって出来るし、そうじゃなくて直した方がいい場所を的確に指摘できることが
プロなんだなぁと思いました。
(ただし、他の編集部も同様かは保障しませんので、その点はご了承ください)
3.3「正論」を言ってくれる人を持とう
自分で描いて満足...というのも一つの答えでしょう。趣味でやっている限りは。
ネットや同人だと、正論(建設的意見)を言うと怒りだしたり泣き出す人が居るので、
思っても言わないし、言われない事が多いです。
現に自分もそうですし、それも付き合い方の形の一つなのだとは思います。
ただ、他人に「ここは変じゃないのか」「こうしたらどうか」と言われないと気付かない事も沢山あります。
言われるのが辛いときもあるけど、
自分でやりたい事が続く限りは、色々なモノを吸収していきたいと思いました。
この駄文が、皆様の楽しい創作ライフの一助になると幸いです。